2019.08.19 Monday

裁判所の判断に問題があったと思われる事例

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    前回身柄拘束に関する裁判所の判断について述べましたが、まさに判断に問題があったと思われる事例が報道されました。

     

    留学の在留資格で日本に滞在していたベトナム人による大麻所持事案で、逮捕後に裁判所が勾留を却下し、捜査機関が在宅で捜査を進めて起訴した結果、本国に帰国されてしまったために公判が打ち切りになったという事案です。勾留が却下された後、検察は準抗告をしたものの、それも退けられたということでした。

     

    帰国されてしまった結果を見るまでもなく、この件は「逃亡のおそれがある」として勾留すべき事案でした。留学の在留資格で滞在していた中、大麻所持が発覚したならば退学は避けられず、そうすれば在留資格も失って帰国しなければなりません。そのような状況にある人物が、わざわざ起訴されて裁判を受けて、有罪判決を受けるまで日本に滞在し続ける実益があるでしょうか?実際の事案の詳細は分かりませんので100パーセント断定はできませんが、通常はどう考えても逃亡のおそれがあります。起訴ができたということは、釈放後任意の取調べには出頭したということだと思いますが、普通はそれすら困難でしょう。

     

    このことは外国人(日本から離れて生活するのが困難な人は除く)のみならず、海外に生活の本拠地がある日本人も同様です。国外逃亡するという、捜査や裁判から逃れる最強のカードを切れる人物の場合、「逃亡のおそれ」が非常に高く、これを阻止するために勾留はやむを得ないのです。

     

    今回、ある意味当然の結果となったわけですが、裁判所に対する批判は避けられないと思います。

    2019.07.19 Friday

    保釈の判断が妥当かという問題

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      保釈中の被告人が逃亡した事案が複数報道されています。

      このような事案は実は以前から少なからず発生していたものですが、先日発生した実刑確定の男が逃走した事案を機に世間的な注目が集まってきました。

       

      当ブログで以前から何度か述べているように、近年裁判所は以前よりも身柄拘束のハードルを上げてきています。

      保釈は身柄拘束からの解放ですから、この流れに沿って近年は容易に認めるようになってきました。

      その傾向自体はまったく問題だとは思いません。

      個人的には望ましい傾向だとは思うのですが、問題なのが裁判官の判断に疑問符が付く場合があるという点です。

      「なぜこの事案でこの被告人に保釈を認めるの?」という事例が少なくないのです。検察側、弁護・被告人側の立場の違いを考慮してもなお疑問を抱かせるような判断がしばしばなされており、裁判官は事情をしっかり検討しているのか、安易に考えているのではないかと疑問を感じたことが正直ありました。逆になぜ保釈を認めないのか?という場合もあると思います。

       

      先日の実刑確定の男が逃亡した事案も、事案の詳細はわかりませんが、犯罪の内容や第一審判決の刑の重さ、男の経歴などからすると少なくとも逃亡のおそれが高かったと思われますし、第一審判決で実刑となった後に保釈を認めたのは疑問だったと言わざるを得ません。

       

      保釈を認めるかどうかの判断は、罪証隠滅のおそれがあるのか、逃亡のおそれがあるか、身柄拘束を続けることで被告人にどれだけの不利益があるかなどの事情を総合的に判断します。

      安易に保釈すると、自由になった被告人が被害者に報復をするかもしれません。逃亡して裁判が続けられなくなるかもしれません。逆に保釈を認めなければ、被告人の事業が立ちゆかなくなるとか持病が悪化するなどの重大な不利益をもたらすかもしれません。

      保釈の判断はこのように影響が大きく責任の重い判断ですから、様々な事情を考慮し熟慮熟考して判断する必要があるはずです。

      その点に関して大丈夫か?と思えるような事案が一定数存在するように思えてならないのです。

       

      保釈中の被告人が被害者に報復を行うなど、重大な事案が発生しなければよいと願っておりますが、どうなることでしょうか・・・

      2019.06.19 Wednesday

      実刑確定の男が逃走中という話

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        6月19日午後8時現在も進行中の事件ですが、実刑確定の男が逃走したというニュースが飛び込んできました。

        窃盗と覚せい剤取締法により東京高裁で懲役3年8ヶ月の判決が確定しており、地検職員が刑務所に収容するため自宅を訪れた際に、刃物を振り回した上、自動車に乗って逃げたということです。

         

        勘違いされがちですが、実刑確定の人を収監する仕事は警察でなく検察の仕事で、検察事務官が担当します。

        警察官と違って格闘技等の訓練は受けていませんし、拳銃も所持していないので、今回のようなことが起こるのは仕方がない面もあると思います(今回は警察官の補助を受けていたようですが、メインで担当するのは検察事務官です)。

         

        実刑が確定すると刑務所に収容されることになりますが、裁判の段階から身柄拘束されている場合が大半で、身柄拘束が引き継がれるので今回のような問題は起きません。

         

        これに対し、保釈された後に実刑判決となった場合は、被告人を再度身柄拘束することになります。

        もっとも、一審判決であれば判決に必ず被告人が出廷しますし、実刑判決と同時に保釈の効力が切れて身柄拘束が復活します。

        ここでも検察事務官が被告人を身柄拘束をするのですが、通常は判決直後の法廷内で行われ、場所的にも心理的にもなかなか逃げづらい状況で身柄拘束されるので、揉めることはあまりありません。

         

        今回のように、自宅などに赴いて収容するというのは、当初から身柄拘束されていない場合や、一審判決後に(再度)保釈され、その後に控訴審や上告審を経て実刑判決が確定する場合です。

        そのような場合でも、多くの人は観念していますし、呼び出しに応じて検察庁に出頭して収容される場合が多いのです。

        検察事務官がわざわざ自宅まで迎えに行くことは多くないと思いますし、強く抵抗されることはなおさら少ないと思います。

         

        今回の件で検察庁の対応が今後問題になってくる可能性はあると思いますが、私が思うのはなぜこのような被告人の再保釈が認められたのかという点です。

        報道によるとこの被告人は一審判決後に保釈されていたというのですが、懲役3年8ヶ月というのは比較的長期の実刑です。

        一審判決も懲役3年8ヶ月の実刑だったと言うことですが、そのような状況でなぜ保釈されたのでしょうか。

        一審判決後の保釈は、一審判決前の保釈と異なり例外的といってよいと思います(権利保釈は認められません)。

        よほど身元がしっかりしている人の場合などでなければ、通常は認められないと思います。

         

        最近は以前より保釈が緩やかに認められるようになってきましたし、一審判決後の保釈も認められる場合が増えてきました。

        推定無罪の原則が働くとはいうものの、一審判決によって有罪であることや実刑であることがほぼ確定している場合にも緩やかに保釈を認めてよいのかは、また別の議論がありうると思います。

        今回の件はその傾向に一石を投じることになると思います。

         

        ※報道を受け内容を一部修正しました。

         

         

        2019.05.20 Monday

        社会的地位の高い人は逮捕されにくいのか

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          池袋で母子が亡くなられた自動車事故に関し、被疑者(運転者)が逮捕されないことが話題になっています。

          被疑者が経産省元幹部や著名企業の取締役を務め叙勲までされた社会的地位が高い人物であり、そのために逮捕されないのではないか、そうだとすればおかしいという意見があるのです。

          被疑者が退院後に逮捕されるだろうとの見方もありましたが、ここ数日の報道を見るとそれも違うようです。

           

          社会的地位が高いと逮捕されにくいのか、という点はイエスと言わざるを得ません。

          というのも、逮捕や勾留は罪証隠滅のおそれがあることや逃亡のおそれがあること等が条件(要件)となりますが、社会的地位が高ければ逃亡する可能性は低くなるからです。地位を捨て、持ち家を捨て、家族を捨ててまで逃げるとは考えにくいということです。

           

          他方、社会的地位が高くない人の場合、身軽なので罪を免れるために逃亡する危険があるとみられがちです。いわゆるネットカフェ難民やホームレスの人など住居不定と見なされる人は、それだけで逮捕・勾留されてしまいます。

           

          このような理由から、一般論として、同じ罪を犯しても社会的地位が高い人の方が逮捕・勾留はされにくいといえます。

           

          もっとも、個人的な意見としては、今回の件で逮捕されないのは単に高齢だからだと思います。87歳という高齢なので逃亡する気力も体力もないだろうし、現実問題として逃亡する可能性はないということでしょう。

           

          とはいえ、罪証隠滅のおそれはどうなのかという問題は残ります。

          自動車運転過失致死傷事件は過失犯であり、一般論として罪証隠滅のおそれが高い類型の犯罪ではありません。逮捕・勾留せずに捜査を進めるケースが非常に多いです。

          しかし、今回の事件は落ち度のない2人の尊い命が奪われた重大事件であることはもとより、報道によれば赤信号を無視し、制限速度を大きく超えた(制御困難な)高速度で通行していた事案であり、客観的な状況を考えるならば危険運転致死傷罪に該当する可能性があり得る事案なのです。

           

          赤信号無視も高速度運転も過失であれば危険運転には該当しませんが、報道によれば今回は直前にも別の事故を起こしており、その事故から逃げる(ひき逃げする)ために、わざと赤信号無視をしたり高速度運転をしたという可能性も、客観的な状況からは考え得るはずです。しかも、妻が同乗していたというのですから、事故を起こすまでの運転経緯や事故直後の被疑者の言動等に関して妻と口裏合わせをするおそれも考えられます。

           

          このような状況からすると、今回は罪証隠滅のおそれを理由に被疑者が逮捕されてもおかしくない事案だったと言えると思います。むろん、罪証隠滅のおそれに社会的地位云々は基本的に関係ありません。

           

          実際に逮捕しなかったということは、警察は、事故の状況やドライブレコーダーの画像や音声(被疑者や妻の音声が入っていたといいます)などから、先に述べたような危険運転の可能性はなく、アクセルブレーキの踏み間違いの過失事案であると判断したということなのでしょう。あるいはドライブレコーダーを押収しているから、妻とは口裏合わせはできないだろうという罪証隠滅のおそれがないという判断かもしれません。

           

          日産元会長が逮捕・勾留されたことが批判される一方、今回の被疑者が逮捕されないことが批判されていることを見ると、日本社会の逮捕・勾留に関する考え方・感覚は非常に複雑なものであると感じます。我々法律家の意見も人によってバラバラです。

           

          ただ一点言えるのは、逮捕・勾留は処罰ではありませんし、裁判での刑の重さと(関係はしますが)直結はしないということです。

          在宅捜査であっても、起訴されて実刑となる場合はいくらでもあります。

          そして、刑罰の軽重を決める上では、社会的地位の高さは関係ないはずです。

          2019.04.12 Friday

          パスポートの押収について

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            日産元会長の再逮捕に伴い、捜索差押がなされたと報じられています。

            その中でも、妻のパスポートを押収したという点について、問題がなかったか危惧を抱いています。

             

            パスポートは、それがないと本来自由なはずの出国できなくなります。

            ですからその押収は、出国の自由の侵害として許されないのではないかと思われるのです。

             

            一般論として、外国人の被疑者を逮捕すると同時にそのパスポートを押収することはあります。

            この場合、身柄拘束を受けている間は当然出国できませんから、釈放時にしっかり返却(還付)されるのであれば、実害はほぼありません。

            これに対し、被疑者ではなく逮捕もされない人物のパスポートを押収する場合は、自由な出国を阻害するという実害が生じます。

             

            他方、偽造パスポートの事案や、その人の人定事項(正しい氏名や生年月日など)が問題になる事案、密輸事案等で過去にどの国に行ったのかが問題になる事案でもなければ、パスポートの証拠価値は乏しく、押収する必要性は高くはありません。

            仮にそのような場合でも、偽造パスポートの事案でもなければ、いったん預かってコピーを作成して直ちに返却すれば目的は達成でき、現物を保管(領置)し続ける必要はないと思われます。

             

            元会長の妻に関しては偽造パスポートの嫌疑はまずないので、押収する必要があったのか疑問を抱かざるを得ません。

             

            とはいえ、元会長の妻は、驚くべきことにもう一つパスポートを持っていたようで(押収されたのはレバノンのパスポートで、別にアメリカのパスポートを所持していたと報じられています)、フランスに出国してしまっています。

             

            可能性は低いと思いますが、仮に検察がこのことを知った上で、あえてレバノンのパスポートだけを押収しアメリカのパスポートを押収しなかったのであれば、実質的には出国の自由の侵害にあたらないのかもしれません。

            しかし、そのような事情でもない限り、このパスポートを押収する必要がどれほどあったのかは疑問であり、出国の自由の侵害として問題になる可能性が高いと思います。

            2019.04.09 Tuesday

            日産元会長再逮捕について

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              保釈されていた日産元会長が再逮捕され、この事件が再び話題を集めています。

               

              保釈後に再逮捕されることは珍しく、「釈放されたのにまた逮捕というのは理不尽ではないか」と思うのが普通の感覚かもしれません。

               

              ただ、法律的にみると、保釈や逮捕・勾留は事件ごとに判断するので、ある事件で保釈となっても、余罪の嫌疑があり、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがあるならば、その余罪で逮捕・勾留されることは十分にあり得ます(なお、保釈の判断の際には、余罪の罪証隠滅のおそれについては考慮されません)。

               

              罪証隠滅の典型は関係者との口裏合わせです。

              事件が違い、関係者も異なるのであれば、保釈された事件では口裏合わせのおそれが低くても、余罪では口裏合わせのおそれが高い、ということはあります。

              その場合、余罪の嫌疑が十分ならば、逮捕や勾留の要件は満たされることになるのです。

               

              今回は、インターネットの利用が制限されるなど保釈条件が厳しかったようで、普通に生活している人に比べれば罪証隠滅が難しい状況だったと思います。

              しかし、事件は今までの事件と全く別であり、関係者も全く異なりますし、ましてや妻や息子の名前も出てきているようですから、口裏合わせのおそれがあると判断されたのはやむを得ないと思います。

               

              保釈中に、逮捕するのは異例だという報道もありましたが、それは確かにそのとおりかもしれません。

              ただ、それは単にそのような事例が少ないということに過ぎず、認められにくいなどという意味ではないと思います。

               

              保釈中に逮捕される場合としては、〕昇畫楮困続いている状態で保釈され、その後余罪の容疑が固まって逮捕される場合、∧歇瓩気譴晋紊僕昇瓩あることが新たに発覚し、その捜査の結果逮捕される場合、J歇畸罎某靴燭僻蛤瓩忙蠅訃豺隋△3パターンがあると思います。

              △呂修發修皀譽▲院璽垢任垢掘↓もさすがに保釈中に犯罪に及ぶ人はあまりいません。

              今回は△筬ではなく,世隼廚い泙垢、,乏催する場合は、多くの場合は保釈請求しません。

              せっかく保釈金を積んで身柄解放されても、また逮捕されれば無駄になってしまうのですから(後で戻っては来ますが)、どうせ保釈請求するなら余罪の捜査が終わってからにしたほうが合理的ということになるのです。

              被告人が保釈請求してくれと言っても、弁護人としては「余罪捜査が終わってからにしましょう」と説得する場合がほとんどだと思います。

               

              逆に、余罪捜査が続いているのに保釈請求するならば、余罪で逮捕されてしまうことを覚悟の上で敢えて請求する、ということになります。

               

              元会長の弁護士もそのことは当然分かっていたでしょうし、元会長に説明していたはずですから、再逮捕はある程度覚悟していたのだろうと個人的には思っています。

              こんなに早いとは思わなかったとか、あの件の捜査はうまくいかないと思っていたのに、という意味で予想外ということはあったかもしれませんが。

               

              保釈中の再逮捕については、法制度の異なる外国から様々な批判があるかもしれませんが、日本の刑事訴訟法においては、問題がありません。逮捕状が発付され、勾留が認められ、勾留の不服申し立て(準抗告)も棄却されているのは、そのことを端的に表しています。

               

              今回問題となり得るのは、それよりも、再逮捕と同時に行われた捜索差押など、付随する手続ではないかと思います(次回に続く)。

              2019.03.14 Thursday

              麻薬取締部(いわゆるマトリ)

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                関東信越厚生局麻薬取締部により、俳優・ミュージシャンのピエール瀧氏がコカイン(使用)施用の容疑で逮捕されたとのニュースが駆け巡っています。

                 

                この麻薬取締部は、いわゆるマトリと呼ばれる組織で、警察ではなく厚生労働省に属します。

                所属する麻薬取締官も警察官ではありません。

                留置場所が湾岸警察署なのでややこしいのですが、単に場所を借りただけのことだと思います。

                 

                違法薬物事件の捜査はマトリだけでなく警察も行っています。

                まれに共同捜査することもあるようですが、多くの事件では別々に捜査し情報共有もあまりなされていないと思います。

                よく言うタテ割り行政の世界です。

                 

                違法薬物事件、とくに(売人でなく)使用者の摘発は、多くの場合職務質問をきっかけにします。

                違法薬物を使用している人は、薬物が効いておかしな行動を取ってしまったり、体内に薬物が残っているのを意識するあまり警察官を見かけて普通ではない反応をしてしまうことがあります。

                その結果、警察官に職務質問され、違法薬物の所持や使用が発覚してしまうのです。

                 

                ところが、マトリの場合この職務質問ができません。

                ですから、地道な内偵捜査を積み重ねて摘発に至ります。

                今回もそのような地道な内偵捜査が行われたと報じられています。

                 

                今回は、ただの使用(施用)の容疑で、密売とか密輸などの規模の大きな事件ではありません。

                にもかかわらずマトリの内偵捜査のターゲットになったのは、有名人であり、社会的影響が大きいからの一点に尽きます。

                 

                今回は、逮捕により予定されていたライブが中止になり、ドラマやCMも打ち切られるなどしているそうです。

                まさに大きな社会的影響が生じています。

                 

                われわれの身近なところでここまで大きな影響が生じることはなかなかありませんが、職場の同僚や部下がある日突然逮捕されることは十分起こりうることです。

                突然欠勤になるわけですから、まずは業務上の穴埋めを何とかしなければなりません。

                また、会社としては、その逮捕者に対してどのような処分をするのか、それをいつ行うのかの問題が生じます。

                その際、本人が容疑を否認しているならば、どう対処すべきなのかは悩ましい問題になります。

                社内でどのように説明するのか、取引先にどう説明するのかも悩みどころです。

                 

                会社経営者や管理職の方々としては、今回のニュースを他山の石として、仮に我が社で似たようなことが起きたらどんな問題が生じるのか、それにどう対応したらよいのか、あらかじめ考えておくのがよいかもしれませんね。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                2019.03.07 Thursday

                日産元会長の保釈について

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                  日産元会長が釈放されました。

                   

                  以前から当ブログで指摘しているように、この事件は罪証隠滅、とりわけ関係者との通謀のおそれが高い事案であり、この点が保釈判断の焦点となる事案でした。

                   

                  弁護人はこの点に関し、住居に定住して出入口に監視カメラを設置すること、インターネットは使用不可、パソコンは弁護人の事務所でしか利用しないことなどを裁判所に申し出たと報道されています。

                  このような申出がされることは異例ですし、いろいろな大丈夫かなと思うところはありますが、罪証隠滅のおそれを少しでも低くしようとした弁護人の努力がうかがわれます。

                   

                  この件もそうですが、関係者や共犯者が多数の事件など、どうしても罪証隠滅のおそれが高くなる類型の事案はあります。

                  そのような場合に、弁護人として、どのような方法で罪証隠滅のおそれが低いとアピールすれば良いのかは悩ましいところです。

                  「このような仕組みを作りましたから、保釈しても罪証隠滅のおそれはないですよ」と主張できるような仕組みを作ることは有効だと思いますが、この点はあまり研究されていないと思います。

                  今回の事例は、そのような仕組みを作った事例として先例的な意義があると思います。

                   

                  とはいえ、いくら上手い仕組みを作っても、それで罪証隠滅のおそれが何パーセント下がるのかはわかりません。

                   

                  そもそも、罪証隠滅のおそれがあるとかないとかと言ったところで、この事案で何パーセントのおそれがあるのかは、誰にも分からないのです。

                  というのも、罪証隠滅のおそれがある事件(主に否認事件)で保釈がなされることは数年前までほとんどなく、経験豊富な裁判官や検察官であっても、「保釈したために罪証隠滅されてしまった事案」というのをあまり経験していないと思われるからです。

                  私も、思い当たる経験はありません(知らないところで罪証隠滅されてしまったことはあるかもしれませんが)。

                   

                  最近は否認でも保釈が認められる事案が増えてきましたので、保釈をして罪証隠滅されてしまった事案があればそれを蓄積し、こういう事案は保釈しても罪証隠滅の危険は小さい、こういう事案は危ないということを経験則として語れるようになるのが望ましいと思います。

                  弁護人の立場としては、「本来危ない事案だけど、経験上、こういう仕組みを作れば罪証隠滅のおそれが劇的に低下する」という仕組みを構築できれば、保釈を勝ち取る可能性が更に高まるでしょう。

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                  2019.03.04 Monday

                  求刑できませんという事例

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                    公判で検察官が「今日は求刑できません」と発言して、延期になったという「事件」があったと報じられています(2019年3月2日毎日新聞)。

                     

                    争いのない常習累犯窃盗事件で、検察官は、論告を読み始めたのに求刑をせず、次回に延期したというのです。

                    その原因はこの記事に書かれているとおりで間違いないでしょう。

                    求刑は捜査を担当する検察官が上司の決裁を取って決定するところ、公判を担当する検察官には決定権限がなく、その場で対応できなかったという経緯だったと思われます。

                     

                    公判期日が迫っているのに求刑が決まっていない、ということはよくあることです。

                    捜査担当検察官は公判期日を意識していないので、公判担当検察官から連絡する必要があります。

                    捜査担当が先輩だったりして言いづらい場合も少なくありませんが、それでも強く言って決めさせなければなりません。

                    今回はそのあたりの連絡を怠っていたということでしょうが、このような事項の管理は公判担当の基本中の基本です。

                    当日に気づいてバタバタすることはありますが、公判の審理中に気づくというのは遅すぎます。

                     

                    この記事で気になったのは、公判には男性検察官の他に上司と思われる検察官が立ち会っていたということです。

                    公判に複数の検察官が立ち会うのは、ふつうは、裁判員裁判や複雑な否認事件など検察官の負担が大きい事件の場合です。

                    争いのない常習累犯窃盗事件は、検察官の負担がかなり少ない部類の事件ですから、通常は1人で立会します。

                    にもかかわらず複数の検察官が立会したというのは、この男性検察官が新人(新任検事)だったので、指導役の先輩検事が付き添ってきたということでしょう(厳密には「上司」ではないと思います)。

                    検察官が新人だったために事件の管理ができていなかった、というのが今回の真相だと思います。

                     

                    ここまで述べてきた事情は検察内部のもので、被告人や裁判所には関係のない話。

                    無駄に期日を延期するのは一般論として被告人にとって不利益ですし、弁護人や裁判官にも迷惑です。

                    記事でも弁護人が怒っていましたが、至極もっともです。

                     

                    もっとも、裁判官は、おそらく延期した分だけ未決勾留日数の算入を増やしているはずです。

                    これは、判決前の身柄拘束期間の一部を刑期に算入し、その分刑期を短縮するというもので、何日算入するかは裁判官が判決で決めます。

                    今回も延期した分だけ未決勾留日数が多く算入されて刑期が短くなっているはずで、被告人の不利益が最小になるよう調整されていると思われます。

                     

                    逆に言えば、そういう調整が働くからか、今回のような件はあまり報道されてきませんでした。

                    似たようなことはこれまでにもあったはずですが、闇に葬られてきたと思います。

                    今回の件も、問題があったことは検察内部で報告されてこなかったのではないでしょうか(地検の幹部が「事実関係がわからない」と言っているのもそのためだと思われます)。

                     

                    このような報道がなされると全国の検察官の戒めになりますので、非常に意義が大きいと思います。

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                    2019.03.01 Friday

                    なぜ保釈が認められたのか〜元俳優の場合と日産元会長の場合

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                      強制性交等罪で起訴された元俳優が保釈されたという報道と、日産元会長が再度の保釈請求をしたという報道がありました。

                      元俳優の場合、(検察の準抗告はありましたが)あっさり保釈が認められたのに対し、日産元会長の場合は今回はどうなるか分かりませんが、今までは2度も棄却されました。

                      その違いは何でしょうか。

                       

                      保釈についての制度については当ブログでも以前触れました。

                      制度としては除外事由(刑訴法89条各号)に該当しない限り認められる「権利保釈」と、裁判官の裁量による「裁量保釈」があります。

                      元俳優の場合、法定刑が重い強制性交等罪で起訴されたので権利保釈の除外事由に該当します(刑訴法89条1号)。

                      ですから、罪証隠滅のおそれ(刑訴法89条4号)があるかどうかの判断をするまでもなく、裁量保釈の道しかありませんでした。

                      この点で日産元会長の場合よりも不利だったといえます。

                      にもかかわらず、裁量保釈があっさり認められたわけです。

                       

                      裁量保釈の判断においては、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれ、勾留されることによる不利益等の要素から判断されます(刑訴法90条)。

                      元俳優の事件の場合、本人と被害者以外に重要な証言ができる人はいないと思いますので、罪証隠滅のおそれとしては、被害者に働きかけをするおそれしか想定できません。

                      もっとも、この被害者は出張マッサージ店の従業員とのことですから、元俳優はその被害者の住所や電話番号などを知らないはずです。

                      つまり、元俳優が仮に被害者に働きかけようと思っても、現実的には不可能だと考えられるのです。

                       

                      このように考えますと、罪証隠滅のおそれはないと判断されるのはもっともだと思います。

                      (逃亡のおそれについても、失職したとはいえ有名人だし、逃亡は無理だろうという判断ではないかと思います。)

                       

                      他方、日産元会長の場合は、関係者が多数存在し、かつ、検察が事情を聞けていない人物もいたようです。

                      しかも、日産元会長がその関係者がどこの誰だかよく分かっており、連絡を取ることは比較的容易です。

                      したがって、罪証隠滅のおそれが高いと判断される可能性は、それなりに高いと思われます。

                       

                      さて、ここまでは、「事件を認めているかどうか」について敢えて触れませんでした。

                      ひと昔前までは、「否認している=罪証隠滅のおそれあり」と判断される場合が多かったと思います。

                      しかし、現在ではこのような単純な判断がされることは減ってきていて、実質的な判断がされるようになってきました。

                       

                      私は、罪証隠滅のおそれについては、〆畩擶L嚢坩戮鬚垢襪海箸客観的に可能かどうか、被疑者・被告人がその罪証隠滅行為をやりそうなのか、という順序で検討しています(多くの検事や裁判官、弁護士も同じような考え方をしていると思います)。

                      否認している場合は△鳳洞舛靴泙垢、,砲牢愀犬ありません。

                       

                      元俳優の場合は、先ほど述べたように,ないわけで、仮に否認していたとしても罪証隠滅のおそれはないという判断になったと思います。

                      この点で日産元会長の場合と大きく異なります。

                      日産元会長の場合に,鯣歡蠅靴るのは難しいと思いますし、否認している以上△眸歡蠅靴たいと思います。

                      そうすると、罪証隠滅のおそれを否定するのは困難で、刑訴法89条4号に該当する以上権利保釈は難しいと考えられます。

                      保釈を得るには、逃亡のおそれがないことや、身柄拘束が続くことの不利益を主張して、裁量保釈をねらう作戦になるのではないでしょうか。

                       

                      いずれにせよ、保釈の判断は、犯罪の重さや否認しているかどうかという要素だけで決まるものではなく、それぞれの事案ごとに、様々な事情を丁寧に検討する必要があります。