<< ゴーン氏事件をめぐる身柄拘束について | main | 医師による強制わいせつ被告事件の無罪判決について >>
2019.02.13 Wednesday

ゴーン氏事件をめぐる身柄拘束について

0

    今回は、特別背任罪での再逮捕再勾留に関して述べます。

    こちらについては、それまでの虚偽記載罪と全く事案が異なりますので、罪証隠滅のおそれがあると判断されたのはやむを得ないと思います。

    逃亡のおそれについても、虚偽記載罪と法定刑の上限は同じですが、実質的にはこちらの方が明らかに重く、実刑の可能性さえありますから、その分だけ逃亡のおそれが高まります。

    したがって、逮捕や勾留が認められたのは仕方がないと思います。

     

    注目したいのは、保釈が認められなかった点です。

    一般的な傾向として身元の固い著名人は保釈が認められる場合が高いと言えます。

    また、最近は保釈が広く認められる傾向があり、いつ保釈が認められるのかという時期の問題はありますが、確実に実刑となる被告人でさえ保釈が認められる場合が多くなってきています。

    しかし、今回は、少なくとも現時点での保釈は認められませんでした。

     

    保釈が認められる条件(要件)は何でしょうか。

    まず前提として起訴後であることです。起訴前の保釈はそもそも認められませんが、起訴後であれば、まず権利保釈が認められる場合があり、それがダメでも裁量保釈が認められる余地があります。

    一定の除外事由に該当しない限り保釈が認められるというのが権利保釈です。

    除外事由に該当しても、裁判官の裁量で認められる余地があるのが裁量保釈です。

     

    権利保釈の除外事由は、刑事訴訟法89条1〜6号に規定されていますが、非常に大雑把に述べると、―鼎ず瓩任△襪海箸篏鼎ち芦覆ある場合(1〜3号)、∈畩擶L任里それがある場合(4,5号)、住居不定の場合(6号)の3つに大別されます。

    着目すべきは、勾留の要件だった「逃亡のおそれ」が除外事由とされていないことです。

    住居があって罪証隠滅のおそれがなく、逃亡のおそれしか認められない場合、勾留は認められ得るものの、起訴後は保釈が認められるのです。

    保釈の場面において、逃亡のおそれは、他に除外事由があって権利保釈が認められない場合に、裁量保釈を認めるかどうかの判断要素として考慮されるにすぎません。

     

    さて、ゴーン氏の場合に戻りますが、権利保釈は認められるでしょうか?

    結論として保釈が認められませんでしたから、裁判官は権利保釈が認められない、つまり除外規定に該当するという判断をしたことになります。

    ゴーン氏の場合、。院腺街罎砲賄たらないはずですし、6号にも当たらないでしょう。

    そうすると、△虜畩擶L任里それがあるという判断だと思います。

     

    私は、ゴーン氏がフランスに戻ると繰り返し述べて、保釈後海外に行くことを示唆したことがその大きな要因ではないかと考えています。

    海外に行くことは逃亡のおそれには直結しますが、そもそも逃亡のおそれは前述の通り権利保釈の除外事由ではありません。

    では、なぜ保釈が認められないかというと、海外に行けば罪証隠滅のおそれが高まるという点に尽きると思います。

     

    今回の事件は、サウジアラビアに関係者が所在し、しかも検察はその関係者の取調べができていないと言われています。

    そうであれば、海外でそのサウジアラビアの関係者やその他の関係者と口裏合わせをする可能性が高いと言えるように思います。

     

    ゴーン氏が日本国内にとどまっても、その関係者らが日本に来て会うかもしれないし、電話やメール等でやりとりはできますから、海外に行くかどうかは罪証隠滅に関係ないのではないかという疑問を持たれるかもしれません。

     

    しかし、日本国内であれば検察の捜査権が及びます。

    日本国内のどこかで関係者と会った場合、どこかに設置された防犯カメラに映像が残るかもしれません。

    自動車のドライブレコーダーに映ってしまうかもしれません。

    ということは、これらの映像が残って検察に押収される可能性が出てくるのです。

    電話やメールも通話や通信の記録が残ってしまいます。

    それらを差し押さえられる可能性がありますし、使用した端末を差し押さえられるかもしれません。

    そうして、関係者と連絡を取ったことがバレてしまえば、保釈が取り消されるのみならず裁判でも無罪の立証に不利になりかねません。

     

    実際に検察がこのような記録等を入手しようとするとは限りません。

    しかし、「やろうと思えばできる」ことが重要で、ゴーン氏においてそのことを認識すれば、誰かと会ったり、電話で話したり、メールで連絡を取るのを控えると思います。

    弁護人も「証拠が残るから絶対にやめてください」とアドバイスすると思います。

     

    ところが、これが海外になれば基本的に日本検察の捜査権が及びませんので、上記のような記録等を検察が手に入れることは困難です。

    そうであれば、ゴーン氏において関係者と連絡を取ることを控える理由が小さくなってしまいます。

    結果、罪証隠滅をしようと思えばやりたい放題、ということになりかねないのです。

     

    したがって、海外に戻ると宣言している人については、権利保釈の除外事由である罪証隠滅のおそれがあるということになり、除外事由があって権利保釈が認められないこととなります。

    また、裁量保釈については、逃亡のおそれが考慮されますので、海外逃亡のおそれが高いということで認められなくても仕方がないと思います。

     

    ゴーン氏も今は態度を翻して日本から出国しないと言っているようですが、いきなり態度が180度変わりましたので、裁判官に信じてもらえなくても仕方がありません。

     

    その点、共犯者のケリー氏は上手に対処したと思います。

    ケリー氏はそもそも日本に拠点がないのに、裁判所には日本から出ないことを誓約してその結果保釈を認めてもらえました。

     

    ゴーン氏としては、当初はルノー社の仕事のためにフランスに戻る必要があると考えたのかもしれませんが、仮に「裁判が終わるまで日本から出ない」と言っていたならばもう少し早く保釈が認められたかもしれません。

     

    保釈が認められる時期については、公判前整理手続において争点と証拠が固まった時点以降になるだろうと報じられていますが、私もその可能性が高いと思います。