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2019.03.07 Thursday

日産元会長の保釈について

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    日産元会長が釈放されました。

     

    以前から当ブログで指摘しているように、この事件は罪証隠滅、とりわけ関係者との通謀のおそれが高い事案であり、この点が保釈判断の焦点となる事案でした。

     

    弁護人はこの点に関し、住居に定住して出入口に監視カメラを設置すること、インターネットは使用不可、パソコンは弁護人の事務所でしか利用しないことなどを裁判所に申し出たと報道されています。

    このような申出がされることは異例ですし、いろいろな大丈夫かなと思うところはありますが、罪証隠滅のおそれを少しでも低くしようとした弁護人の努力がうかがわれます。

     

    この件もそうですが、関係者や共犯者が多数の事件など、どうしても罪証隠滅のおそれが高くなる類型の事案はあります。

    そのような場合に、弁護人として、どのような方法で罪証隠滅のおそれが低いとアピールすれば良いのかは悩ましいところです。

    「このような仕組みを作りましたから、保釈しても罪証隠滅のおそれはないですよ」と主張できるような仕組みを作ることは有効だと思いますが、この点はあまり研究されていないと思います。

    今回の事例は、そのような仕組みを作った事例として先例的な意義があると思います。

     

    とはいえ、いくら上手い仕組みを作っても、それで罪証隠滅のおそれが何パーセント下がるのかはわかりません。

     

    そもそも、罪証隠滅のおそれがあるとかないとかと言ったところで、この事案で何パーセントのおそれがあるのかは、誰にも分からないのです。

    というのも、罪証隠滅のおそれがある事件(主に否認事件)で保釈がなされることは数年前までほとんどなく、経験豊富な裁判官や検察官であっても、「保釈したために罪証隠滅されてしまった事案」というのをあまり経験していないと思われるからです。

    私も、思い当たる経験はありません(知らないところで罪証隠滅されてしまったことはあるかもしれませんが)。

     

    最近は否認でも保釈が認められる事案が増えてきましたので、保釈をして罪証隠滅されてしまった事案があればそれを蓄積し、こういう事案は保釈しても罪証隠滅の危険は小さい、こういう事案は危ないということを経験則として語れるようになるのが望ましいと思います。

    弁護人の立場としては、「本来危ない事案だけど、経験上、こういう仕組みを作れば罪証隠滅のおそれが劇的に低下する」という仕組みを構築できれば、保釈を勝ち取る可能性が更に高まるでしょう。